金融サービス業界は、イノベーションの激しい波にさらされています。今後数年、銀行・金融サービスではどのようなトレンドが見られるのでしょうか?

2020年が私たちに何かを教えたとすれば、それは未来は予測できないということです。翌年の予測を立てるのは常に難しいものですが、デジタルバンキングと金融業界には、目の前で形になりつつあるトレンドが数多くあります。
その中には、過去数年、あるいは数十年にわたって発展してきたテクノロジーや顧客動向の延長線上にあるものもあれば、新たに登場し、「ニューノーマル」になっていくものもあります。それが何を意味するにせよ。
とはいえ、2021年の銀行・金融業界のトレンドを詳しく見ていく前に、背景を押さえるため、2020年に何が起きたのかを簡単に振り返っておきましょう。
2020年を迎えるにあたり、銀行・金融サービス業界では、Deloitteが「メガトレンド」と呼ぶいくつかの大きな潮流が進行していました。その多くは数年前から続いており、多くのアナリストは、昨年も着実に進展を続けるだろうと考えていました。いわば、いつもどおりの状況です。
当然ながら、パンデミックはその流れを大きく狂わせました。停滞したメガトレンドもあれば、一気に加速したものもあります。グローバル化、都市化、シェアリングエコノミーは、移動の減少、健康への懸念、ソーシャルディスタンスの措置によって、いずれも勢いを失いました。
一方で、デジタル化とリモートワークの計画は大幅に前倒しされました。この業界は、セキュリティ上の穴が生じかねないという懸念から、これまで在宅勤務制度の導入に慎重でした。
そして、その懸念は正しかったのです。2020年2月から4月にかけて、金融セクターへのサイバー攻撃は238%増加しました。従業員の大部分を在宅勤務にせざるを得なかった企業は、この12か月、サイバーセキュリティに力を注いできました。
デジタル化とコスト削減が重なり、2020年には多くの大手銀行で支店閉鎖の計画も加速しました。これにより、デジタルな顧客体験への移行が進んでいます。英国のNatWestはその好例で、顧客とのビデオバンキングの通話件数は、1月には週100件ほどでしたが、9月には9,000件を超えました。
公衆衛生上の措置がとられている以上、2021年が2020年と同じ形で終わるとは限りません。しかし、こうしたトレンドの多くは、業界の仕組みそのものの根本的な変化です。デジタルバンキングへの加速と、成熟していくサイバーセキュリティ対策は、この10年で後戻りすることはないでしょう。そして、後戻りすべきでもありません。

この12か月で特に目立ったトレンドをいくつか取り上げてきました。デジタル化の加速、労働力の仮想化、より強固なサイバーセキュリティ、そしてコスト削減などです。
では、もう少し掘り下げてみましょう。銀行・金融サービス業界は、ここからどこへ向かうのでしょうか?今後数年で、どのようなデジタルトレンドが見込まれるのでしょうか?
銀行・金融業界の多くの企業は、長期的なロードマップにAIによるイノベーションを組み込んでいました。しかし、Economist Intelligence Unit(EIU)の調査によると、AIへの投資から価値を引き出せるかどうかが、ポストパンデミックの世界における勝敗を分ける要因になるといいます。
実際、EIUの統計によると、経営幹部の77%が、AIが今後の銀行業界の勝者と敗者を分けると考えています。Contentstackの別のデータでは、AIを含む新しいテクノロジーが今から2025年までに銀行に最も大きな影響を与えるトレンドだと考える経営幹部は66%にのぼり、昨年の42%から大幅に増加しています。
ブロックチェーン、IoT、機械学習、リスク管理の自動化は、いずれもAIが意思決定を支援し、従業員をより戦略的に重要な業務に振り向けられるようにする分野です。銀行・金融サービス企業がオンラインの顧客体験を次のレベルへ引き上げようとする中で、チャットボット、バーチャルアシスタント、デジタルヒューマンに搭載された会話型AIも、さらに普及していくと考えられます。
McKinseyによると、AIをうまく活用した企業は、未開拓の新たな顧客市場にアクセスし、規模を飛躍的に拡大し、エンゲージメントを高め、リスクを低減し、サービス提供コストを削減できると期待できます。
顧客と接する会話型AIには、根強い課題を解決する大きな可能性があります。たとえば、金融教育の充実は、多くの銀行や金融機関にとって意義のある目標です。金融リテラシーの向上におけるAIの役割、特にデジタルヒューマンのソリューションを通じた役割は、2021年に注目を集めることになるでしょう。

パンデミック以前から、銀行は事業を前進させるためにデジタルエコシステムの構築を目指していました。2019年のAccentureの調査によると、実に89%の銀行が、顧客向けのエコシステムを将来の価値創出の主な原動力と捉えていました。
しかし顧客は、依然として個人に寄り添ったパーソナライズされた顧客体験を期待しています。実店舗の支店を訪れたときに得られるような、人間らしい対応を求めているのです。コストを抑え、強固なサイバーセキュリティ対策を維持しながら、こうした体験をオンラインで提供するのは、難しいバランスが求められる取り組みになるでしょう。
既存の銀行や金融サービス事業者は、この領域を進むために、機動力のあるフィンテック企業やその他のデジタルエコシステムのパートナーを頼ることになるでしょう。うまくいけば、資産運用のアドバイス、消費者金融、医療保険、住宅など、手軽に利用できるさまざまなサービスを顧客に提供できます。
これにより業界は、顧客体験のより多くの部分を担い、中核となる取引サービス以外の分野で大きな成長を実現できます。一方で、2020年に初めてオンラインサービスを利用し始めた顧客もいるため、企業は自社のエコシステムを、わかりやすく、サポートが充実し、直感的に使えるものにしたいと考えるはずです。

街中の支店は減少しているかもしれませんが、すぐに完全になくなることはないでしょう。
多くの中小企業や大企業は、今でも銀行で対面の取引を行うことを好みます。また、複雑な問い合わせで追加のサポートを必要とする個人向け銀行サービスの顧客は、地元の支店で必要な支援を受けるほうが安心できるかもしれません。
しかし、日々の取引やその他の簡単な手続きについては、デジタル化によって支店が名実ともに21世紀にふさわしい姿へと変わっていくでしょう。
とはいえ、「支店のない」銀行社会で自然と失われていくものについて考えてみてください。人間ならではの特別な体験を提供してくれる専門家と、対面で話せる機会は少しずつ減っていくでしょう。
多くの支店は完全なセルフサービスセンターに転換され、自動化技術やAIを活用したソリューションによって、顧客がほとんどの手続きを自分で行えるようになるかもしれません。より親しみやすい顧客体験を提供するために、銀行は、現地にスタッフがいないときでも対面のサポートを提供できる、デジタルヒューマンのキオスク端末を導入する可能性もあります。
あるいは、UneeQがDellおよびNVIDIAと構築した以下のデモのように、あらゆるWebブラウザから、より魅力的でパーソナライズされた銀行体験を提供するデジタルな銀行支店が広がり始めるかもしれません。
多くの銀行やその他の金融機関が、環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みを進め始めています。このトレンドは、2021年も衰える兆しがありません。たとえば、Deloitteの最近のデータでは、銀行の4分の3が気候関連の取り組みへの投資を増やそうとしています。
しかし今後は、パンデミックによって経済的に大きな打撃を受けた多くの顧客に対し、業界内の企業が共感をもって対応することも求められるようになります。
顧客体験のデジタル化が進む中、こうした状況でいかに温かく親しみやすいサービスを提供し、同時に社会的な責任への姿勢を示せるかを、多くの事業者が自問することになるでしょう。
そして、すべての企業が従業員に対して負う責任も忘れてはなりません。昨年は従業員にとってストレスの多い一年であり、2021年にも続く不安を呼び起こしたかもしれません。
新しいAIの取り組みは、単純な作業を従業員から引き受けることで、従業員が自分でできることを強化し、拡張するものでなければなりません。テクノロジーは従業員の仕事を楽にするものであるべきで、新たな不安の種になってはなりません。これはデジタルワークフォースというトレンドの重要な目標であり、詳しくは無料のeBookでご紹介しています。
もちろん、こうした取り組みはすべて、それが正しいことだから行うものです。とはいえ、消費者も企業の社会的責任に魅力を感じ、社会に良い影響を与えようとする取り組みを支持することを知っておくのは良いことです。
たとえば、消費者の33%が、社会や環境のために良いことをしているブランドから購入することを選んでいると答えています。特に若い世代は購買行動で意思を示しており、90%が、自分の価値観に合った企業の社会的責任を果たしている企業を見つけてブランドを乗り換えたことがあると答えています。
世界中の多くの業界と同様に、銀行・金融サービスも2020年にかつてない課題に直面しました。
しかし多くの金融機関にとって、パンデミックは、現代の消費者にとって意味のある存在であり続けるために、すでに進めていた取り組みを加速させたにすぎません。デジタル化、AIイノベーション、より良い顧客体験に向けた計画を前倒しすることで、銀行やその他の事業者は、2021年以降に向けて自社のビジネスをデジタルの面で万全な状態にできます。
私たちの個人的な願いは、デジタルバンキングが自らの歴史から学び、銀行・金融サービスの土台となってきた「人と人とのつながり」をもっと取り入れていくことです。デジタル化された(さらにはソーシャルディスタンスが求められる)時代に、実際の人間がそれを提供するのは難しいかもしれませんが、デジタルヒューマンはそれを存分に提供しています。
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